仮想通貨の歴史的事件まとめ

仮想通貨で過去に起きた事件を詳しく解説しています。過去の事件・出来事から教訓を学び、今後の取引に生かしましょう!

マウントゴックス事件とは?ビットコイン消滅事件を徹底解説

マウントゴックス事件とは? 仮想通貨で起きた事件一覧

マウントゴックスとは?

仮想通貨業界には多くの事件が発生しています。国内だけでも、コインチェックのネム流出事件やZaifのハッキング事件など起こりました。これらの事件は、仮想通貨業界が盛り上がっていた時期に発生したこともあって知っている人も多いでしょう。多くのメディアでも取り上げられましたし、芸能人の方も被害に遭っていました。

しかし、実はこれらの事件より前に大規模なハッキング事件が起きていたのです。それが『マウントゴックス事件』と呼ばれるものです。一体どのような事件だったのか見ていきましょう。

マウントゴックス社

まず、事件の中心にいるマウントゴックス社がどういった会社だったのか簡単に解説していきます。マウントゴックス社(株式会社Mt.Gox)は、カードゲームを売買するための交換所として設立していました。

世界規模で人気のカードゲーム『マジック・ザ・ギャザリング』を扱っていたので、知っている人もいるかもしれませんね。会社名にもなっているMt.Goxも『マジック・ザ・ギャザリング(Magic The Gathering)』の頭文字を取った『MTG』が由来とされています。

そんな中、マウントゴックスが目を付けたのが仮想通貨でした。ビットコインの価値や今後の伸びしろを考えて、2010年にビットコイン事業に転換を決めたのです。今となっては、非常に高価で価値のあるビットコインですが、2010年頃にビットコインに注目していた人はかなり少なかったです。先見の明を持っていたとも言えますね。その後、経営権がマルク・カルプレスに譲渡されます。

しかし、このマルク・カルプレス氏が社長として就任した時期に流出事件が起きてしまったのです。そう考えると、運がない人程度で済むかもしれませんが、このマルク・カルプレス氏はとんでもない秘密がありました。(※後述しています。先に読みたい方はコチラをクリック)

何はともあれ、マルク・カルプレス氏が社長に就任してからは、ビットコイン事業を手広く扱うようになっていったのです。

取引所としての実績は非常に高く、ビットコインを世に広げ始めるきっかけになったと言っても過言ではありません。2013年の4月には、世界のビットコインの約7割を独占している取引所となり、世界最大級の仮想通貨取引所として大きな期待が持たれていました。今も残っていたら、どの取引所よりも利用者が多かったと思います。

しかし、違う意味でビットコインの存在を広げることになってしまうとは思っていなかったでしょう。

現金28億円と75万BTCが消失

上記のように、仮想通貨取引所として大きな成長を遂げたマウントゴックスだったのですが、2014年に事件が起こってしまいます。マウントゴックス事件と呼ばれているこの事件は、仮想通貨業界での事件では外せないほどのインパクトを与えることとなったのです。主な被害は、サーバー攻撃による巨額のビットコインとユーザーからの預かり金が消失したというものでした。

仮想通貨取引所でのハッキング被害のイメージとしては、ユーザーが預けていた特定の仮想通貨が盗まれるといったものでした。しかし、マウントゴックス事件では預り金までも盗まれることとなったのです。被害額は、ビットコインで約75万BTC(当時のレート計算で約480億円)、預り金が28億円でした。2つ合わせて約500億円もの資産が流出してしまった訳です。

この大規模なハッキング事件の影響でマウントゴックス社は負債額が増加してしまい、債務超過に陥ってしまいました。事実上の経営破綻となったマウントゴックス社は、東京地裁に民事再生法の申請を行うことになったのです。被害者に対する補償に関しては資産が残っていないことか行われず、泣き寝入りするしかありませんでした。

当時こそ480億円分という計算でしたが、現在75万BTCがハッキングされたらその被害額は約5400億円(2018年10月のレート)なので、ある意味この時期で良かったのかもしれませんね。逆を言えば、この時にハッキングした犯人はとんでもない資産を手に入れたことになります。

実は、この犯人とされているのがマウントゴックスの社長であったマルク・カルプレス氏だったのでは?と言われているのです。

犯人はマルク・カルプレスなのか

マルク・カルプレス氏

マウントゴックス事件発生当初の原因とされていたのが、サイバー攻撃によるハッキングだと考えられていました。

マルク・カルプレス氏もハッキングに遭ったと説明したことから、その線での捜査が進められていったのです。しかし、ハッキングの形跡を見つける前に違うものを発見してしまいましたが、マルク・カルプレス氏による社内システムの不正操作と判明したのです。

捜査によって発見されたのが、マルク・カルプレス氏自身の口座残高のデータ改ざんと、ユーザーの預金を着服したというものです。改ざんの件で逮捕された後、着服の件で業務上横領の疑いで再逮捕されました。このことから、マウントゴックス事件の犯人、もしくは原因を作ったのはマルク・カルプレス氏だと言われているのです。

逮捕されたマルク・カルプレス氏でしたが、保釈保証金として1000万円を納付したため2016年に保釈されています。

保釈されたマルク・カルプレス氏ですが、容疑が晴れた訳ではなく未だに容疑者として疑われています。そんな中、2017年になってマウントゴックス事件の初公判が行われました。この時期になると、仮想通貨も有名になっていたこともあって多くの人が注目していました。

マルク・カルプレス氏は無罪を主張

2017年7月に行われた初公判に被告として出席したマルク・カルプレス氏でしたが、起訴事実は否認しています。自分は何も関わっていないとして無罪を主張している状態であり、これからも続きそうな気がしてしまいますよね。ユーザーに対しては、迷惑をかけたことに対する謝罪はあったものの資産が返ってくる訳ではないので、納得するのも難しいでしょう。

このように、被害に遭ったユーザーに対する補償は何もなく、犯人も断定出来ていないため今でも根深い事件として語り継がれています。

資産が返ってくる!?

初公判も終わって仮想通貨が大いに盛り上がっていた2018年の始めに、マウントゴックスに関して奇妙な情報が流れ始めたのです。それが『マウントゴックスのウォレットに約20万BTCが残っていた』というものでした。

被害に遭った75万BTCには足りないものの、当時のレートより10倍以上の価値になっていますから、日本円に換算すると被害額を大きく上回る額になります。

破綻した会社の資産が大幅に増えているという不思議な現象が起こった訳です。さらに、ビットコインは2017年8月にハードフォーク(分裂)を行ってビットコインキャッシュが誕生しているので、20万BCHも保有することになります。当然、このような情報が流れれば全てをビットコインで補償することは出来ないにしても、何かしらの補償があるのではないかと期待されました。

そんな期待の中、残っていたビットコインの使い道が提示されたのです。マウントゴックスの破産管財人と裁判所との協議の結果、残っているビットコインと誕生したビットコインキャッシュに関しては、売却して日本円にするべきであると結論付けました。実際に、2018年3月までに約430億円分のビットコインとビットコインキャッシュが売却されました。この売却によって、ビットコインの価格が下落したとも言われています。

残念ながら、今のところマウントゴックスから補償されたとも、そういった内容の報告があったとも聞いたことがありません。これからも何かしらの方法で返還されるとは考えにくいかもしれませんね。しかし、全て日本円に換えたとしても何千億もの資産になるはずですから、どうしても期待してしまいますよね。

マウントゴックス事件による市場への影響

マウントゴックス事件の影響で、仮想通貨業界には多くの規制が入ることになりました。資産を守るためとは言え、市場に大きな影響をもたらすものもあります。では、どのように変わっていったのでしょう。

改正賃金決済法が施行

マウントゴックス事件が起きても、取引は加速し続けました。仮想通貨は日常的に目にするようになり、利用する人も徐々に増えていくのは当然の流れです。しかし、流行れば流行るほど事件や犯罪にも使われていくものです。仮想通貨もハッキングや不正利用などの問題が浮上してきました。日本の仮想通貨に関する法律は厳しくありませんでしたが、マウントゴックス事件から3年が経った2017年、とうとう政府が動き始めたのです。

まずは、仮想通貨に関する法律を整え始めました。その第一弾として『改正賃金決済法』が2017年4月1日から施行されたのです。この法律の主な内容としては、マウントゴックス事件を繰り返さないように『取引所の登録制と規制』を義務付けるというのもです。これが施行したことにより、資金力のない中小企業は仮想通貨取引所としての営業が出来なくなりました。今後、伸びる業界だけあって悔しい思いをした会社も多かったはずです。

しかし、この法律が設けられたことによって反対に、GMOやSBIなどの大手企業も仮想通貨取引所として参入出来たのは大きかったでしょう。今では国内でも大きな影響力を持つ取引所になっています。規制はユーザーを守るためのものです。安心して仮想通貨の取引が出来るように、国を挙げて動き出したということでしょう。

仮想通貨交換業者が登録制になる

上記と少し被る話なのですが、仮想通貨の取引や管理を行う業者は登録しなければ認められません。防犯上の問題で、誰でも仮想通貨に関わる事業を始めてしまっては、良からぬことを考えている業者全てに対処することが出来ないからです。

しっかりとした審査を通ることによって、最初から犯罪の芽を摘んでおくことに繋がります。それだけ仮想通貨は将来性を期待されていたとも言えます。

登録業者の財務規制

仮想通関連貨業務を行うための登録を行えば運営開始…という訳にはいきません。登録の後にも、さらに規制が敷かれています。財務規制と呼ばれるものです。資本金の額が1000万円以上保有していること、そして純資産額がマイナスになってはいけないというものです。

このような財務規制があることによって、仮想通貨の取り扱い事業参入を簡単に行えないようにしています。

分別管理

今回のマウントゴックスの場合、自己資産とユーザーの資産が混同して保管されていたとされています。このような管理方法ですと、今回の事件のように顧客資産が会社側の別事業に利用されることが再び起こるかもしれません。そうならないためにも、仮想通貨事業を行う業者は自身の資産とユーザーの資産を分けて管理しなくてはいけなくなりました。

区分管理の状況についても厳密に決められており『公認会計士又は監査法人による外部監査を受けることが義務』となっているのです。不正な会計処理を事前に防ぐことによって、ユーザーの資産を保護出来ます。取引所のミスで全ての通貨が盗まれては納得いかないですよね。

まとめ

仮想通貨業界の中でも大きな爪痕を残すこととなったマウントゴックス事件でしたが、それがきっかけとなって仮想通貨に関する法律が作られました。

未だに全てが解明されていない事件ですが、仮想通貨にとって良くも悪くも一つの転機になったことは間違いありません。今後も、この事件を忘れずにしっかりとしたセキュリティ対策を行ってもらいたいですね。